松本まりか『ザ・ノンフィクション』で語りに挑戦「どんなストーリーでも知りたいですし、読みたいです」
10月11日、18日(日)14時~『ザ・ノンフィクション』
10月11日(日)14時からフジテレビでは『ザ・ノンフィクション 禍の中でこの街は 前編 ~新宿二丁目 コンチママの苦悩~』が放送される。
※「後編」は、10月18日(日)放送。

新宿二丁目。LGBTが集うこの街で、50年以上の長い歴史を持つショーパブ「白い部屋」。20代から70代までのキャストが華やかなショーを繰り広げる。浮世を忘れさせる華やかな空間は、半世紀にわたり、多くの客を魅了してきた。

この店を創業したのは72歳のコンチママ。この街の“生き字引”ともいえる彼女は、18歳の時に大阪から上京。新宿二丁目に流れ着き、二十歳の時に人に誘われて始めたのが「白い部屋」だ。

2020年、「白い部屋」とコンチママをコロナ禍が襲う。2ヵ月半におよぶ休業。その間、店の収入は途絶え、月に100万円以上の固定費が重くのしかかる。膨らみ続ける赤字。コンチママは店の存続をかけて金策に奔走するが…。

一方で、店を支えてきたキャストたちも休業中の給料はゼロ。店と自分たちの将来について、いつ終わるとも知れない不安を抱える日々が続く。緊急事態宣言の解除を受け、「白い部屋」は営業再開を目指すも、コンチママとキャストたちの間には、心のすれ違いが生まれていた。
長年、店を支えて来たベテランキャストたちが、店を離れることを決意して…。コロナ禍の中、新宿二丁目で生きる人々の苦悩をカメラは追った。
今回、そんな番組のナレーションを松本まりかが担当した。声優やナレーションの仕事も多数経験していることもあって、前後編という長編ながら、収録はスムーズに進行。さらに、「もう1回お願いします」などと、スタッフとも熱気あるコミュニケーションを繰り返していた。
収録後には松本へのインタビューも実施。コロナ禍で生きる人々の姿を映した今作を、自分自身にどう反映させていたのか。言葉を一つ一つ丁寧に謙虚に選びながら語ってくれた。
<松本まりか インタビュー>

――ナレーションを終えての感想を教えてください。
すごく番組に引き込まれました。もともと、私はドキュメンタリーが昔から好きでした。私がやっているのはお芝居ですが、本物の“リアルな人生”には昔からすごく興味があって。
『ザ・ノンフィクション』のナレーションは、昔から憧れていて、ずっとやりたいと思っていたので、今回担当できて本当に幸せです。知らない間に自分の神経を持っていかれるというか、映像に引き込まれながら読んでいったので、いい意味で何も考えずに、コンチママたちに動かされながら読んでいけたかな、と。
(番組の内容は)心地よくもあり、集中できたし、今、自分に必要な内容でした。最近、あまりテレビとかも見られなくて、アウトプットばかりの日々だったので、インプットを欲してました。そんな状態の中で、今回のディープな生き様を見て影響を受けることができて、すごく良かったなあと思いました。
私の人生で、一番忙しくなったのが、このコロナ前後で。それまでは時間にゆとりがある状態だったのですけれど…。自粛期間が明けて以降、本当に人生で初めてというくらい、お仕事をいただけて。
でも一方、コロナ禍で仕事ができなくなっているという方たちもいて。以前の私自身がそういう状態だったので、(仕事があまりない状況が)ものすごくわかるというか、「今の状況がありがたいことなんだ」っていうのを改めて思い知らされました。今回コンチママのような方たちもいるということも知れたことは、必要なタイミングで、必要なものをいただいたなっていう感じがするんです。
――今回の番組で、見どころだと思ったシーンはありますか?
悩ましい…。シーンとか、そういった一部分とかではないと思っています。
やっぱり、この状況というのは平等にみんな一緒で。コンチママの店から去る人もいて、映像の中で「このコロナで人間の本性が見える」という言葉もありましたけど、でもそれって本当に本性なのか、コロナでそういうふうに変わってしまったのか?コンチママも、(コロナ禍に対して)文句を言っているけど、一方でそうじゃない気持ちもあったりとか。(今の状況を)前向きに捉えるかんたさん、コンチママを信頼できなくなってしまうあおいさんもいたり。
このコロナ禍っていう試練を私たちが与えられた中で、いろんな選択をしたり、いろんなふうになってしまう人たちがいると思うんですよ。でも、そのどれもが、どれでも“良い”(選択)というか。
今が苦しいから“明るく無理にいかなくちゃいけない”って思っている方にも、何か、“そうじゃなくていい”と言える教えがあるというか。コロナでいっぱいいっぱいだと、視点が自分のことだけになっちゃうじゃないですか。
でも、なんか、そう思ってもいいっていうか。次の一歩をどう進めるかというのは、自分たち次第であって。今の自分の病んだ気持ちだとか、そういうのを責めて欲しくない、悪いと思ってほしくないです。私は、今回のこのコンチママとその周りの人たちの物語から、そういうことを受け取っています。いろんな人の人生や環境に共感する。いろんな人の立場や決断を受け入れることの大事さを教わりました。

――ご自身にとって、ナレーションとはどういう位置づけですか?
あまり難しいことは考えてないというか、自分が視聴者になって読んでいるっていう感じです。ナレーションに気持ち込めすぎるのも押しつけになってしまうし、でも入れなさすぎても違う。自然と(映像に)動かされる感じで読んでいるので、楽しみながらやらせていただいています。
今、ナレーションを担当しているバラエティ番組は、こんなナレーションがあってもいいんだな、と思える、いい意味でゆるいもので、すごく楽しいです。そういうものもすごく楽しいですし、今回みたいなドキュメンタリーのナレーションができるというのも、私にとってとてもうれしいです。なんで、うれしいんだろう?わからないですけど、ドキュメンタリーが好きだからですかね。好きだからこそ、ただただうれしい気持ちになります。
――その熱意ゆえか、今回の収録でも、スタッフに「もう1回お願いします!」とたびたび申し出ていましたよね。
“この流れではこの音ではない”とかって思うんですよ。なんか、ここにはハマらないとか、音が変に飛び出してるとか、何か軽くなってるとか、そぐわないのが嫌だって思うので。
あとは、語尾が丁寧じゃないとか、締まらないとか。何か、感覚かな?音の感覚で。子音が強かったり、滑らかでないと、ストーリーを壊しているような気がして。自分が心地よく(ドキュメンタリーの世界に)入っていければ、きっと皆さんも入っていけるんじゃないかなって思っています。自分がドキュメンタリーが好きだからこそ、自分が聞いていて心地の良い音を求めて、「もう1回お願いします」と言っている気がします。
――私たちも、今回の松本さんのナレーションを堪能しました。
ありがとうございます。うれしいです。すごくヘビーな収録でしたけど(※この日は前後編で4時間を超えた)、何より本物の人生の機微に触れられたということが、ものすごく刺激になりましたし、またやらせていただける機会があればうれしいです。
――もし、また番組のナレーションを担当するとしたら、どういうストーリーを読んでみたいですか?
それは私が想像できるものではない気がしていますが、私自身は、どんなストーリーでも知りたいですし、読みたいです。その人の人生を知りたいっていうのも大きいかもしれないですね。
収録後、松本まりかがナレーションの一部を披露してくれた。