焙煎職人から世界に知られるバイヤーへ…丸山珈琲・丸山健太郎を支えるコーヒー生産者への思い
2月23日(火)放送『石橋、薪を焚べる』
石橋貴明が文化人、ミュージシャン、タレント、アスリートなどジャンルを問わず“話してみたい”ゲストを迎え、焚き火の前でじっくり語り合うフジテレビ『石橋、薪を焚べる』。
2月23日(火)の放送は、株式会社丸山珈琲の代表取締役社長・丸山健太郎氏が登場。コーヒー市場のトレンドやこれからの夢を語った。

「産地」よりも「生産者」の時代
石橋は、コーヒーの原産国であるエチオピアにおいて、昨年初めて行われた品評会で優勝したコーヒーを味わう。
丸山:これは80グラムで、1万円超えております。
石橋:1万円超えるんですか!?
丸山:そうですね。
石橋:だって、牛肉だって100グラム4000円出したら、ほぼほぼ松阪のすげーやつ出てきますよ。
丸山氏によると、コーヒー豆には元々の相場価格があり、昔から1キロで200円~300円を行き来している。それとは別に、上物の価格があり、その豆が欲しい人たちが競り合うことで値段が上がっていくという。
石橋:どこの国が人気になっているとか、そういうトレンドみたいなものはあるんですか?
丸山:一番人気があるのは…どうだろう。エチオピア。
石橋:エチオピアなんですか。
丸山:あと、日本ではあまり知られてないんですけど、ケニア。
石橋:ケニア。
丸山:風味が素晴らしい。
現在は「産地」よりも「どの生産者がいい豆を作っているか」という生産者主体の時代になってきているという。
丸山:コーヒーって、その場所できちっとやっていれば毎年だいたい同じ品質のものが作れるんですよ。
石橋:ロマネコンティの畑はずっとロマネコンティが出てくるみたいな?
丸山:そうです。
良い豆ができる畑やその生産者を見つけることは、「バイヤーからすると資源戦争」と丸山氏は語った。
石橋:それは、生産者にとってはやる気が出るというか。
丸山:やりがいが出ます。前はどんなに努力したって…。
石橋:買い叩かれちゃうわけでしょう?
丸山:買い叩かれちゃって、投機的な、自分たちと関係ない理由で(相場が)下がったりするんですよ。そうすると、家のローンが組めないわ、車も買えない、だいたい農園が担保に入ってるから、農園も取られちゃうという。
そんな「決まったパターンで悲劇が起きていた」が、近年ではフェアトレード(※)になってきて、有名な生産者も増えてきたそう。
(※)フェアトレードとは、開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することによって、立場の弱い開発途上国の生産者、労働者の生活改善と自立を目指す貿易、またはそのしくみのこと。
放浪生活から「職人」にあこがれてコーヒーの道へ

「実はコーヒーあんまり好きじゃない」「最近好きになってきた」と明かす丸山氏がコーヒーと出会ったきっかけは、高校卒業後にインドやアメリカなど海外を放浪し、日本で社会復帰しようとしたときに「ペンションで喫茶店でもやったらどう?」と義理の両親から勧められたことだ。そこで「ベジタブルカレーとチャイの店」をスタートさせたが…。
丸山:それが結局、コーヒーを頼まれるわけですよ。コーヒーを頼まれるから、ちょっと勉強し始めたら面白くなって。いわゆる焙煎という作業があることがわかって。今はちょっとまた変わってきましたけど、あの当時は一生かけて極めるものみたいな、特殊技能みたいなところがあって。
そこで丸山氏は、「職人」という生き方にあこがれ、「日本一の焙煎職人になる」とコーヒーの道を歩むことに。
丸山:だんだん技量が上がってきて、何とか食べられるようになって。自分の師匠も「腕が良ければ豆が少々悪くても美味しく焙煎できる」という名人だったんですよ。自分もそう思っていたんですけど、10年くらい経って「やっぱり素材って大事だよな」って当たり前なんですけど、気がついたんです(笑)。
石橋:(笑)。安い豆よりも良い豆を買って、それを丁寧に焙煎したらもっと美味い、と。
当時は「良い豆を探したくてもなかった」時代。しかし、ちょうどそのころ、アメリカで「スペシャルティコーヒー」の機運が高まっており、2000年ごろにはアメリカ各地のコーヒー店が産地に豆を買いつけに行くようになっていた。
焙煎職人から世界を飛び回るバイヤーへ
丸山:日本にもいろいろ情報は届いていたんですけど、「スペシャルティコーヒー」なんてわけのわからないものは胡散臭いと(日本人は)みんな思っていたんですよ。
周囲の人たちが尻込みしていた2002年、「行きます」と手を挙げ、バイヤーとして海外に豆を買いつけに行くことに。最初に行ったのは「ニカラグア」。
それ以降、「美味しいコーヒーをゲットするには場所を抑える」という信条の下、1年の半分近くを海外で過ごし、独自のルートで産地を巡って厳選した高品質のコーヒーを仕入れている。
石橋:(良い)豆は入るようになった。だけど日本人にそれがすぐに受け入れられたのか?
丸山:そう、それが問題なんですよ。買う単位が1俵(約60~69キロ)単位なんです。例えばブラジルとかザンビアとか、1ヵ国のコーヒーだけで勝負できればいいけど、何ヵ国も仕入れなきゃいけないじゃないですか。
石橋:最初、軽井沢でしょ?そんなにたくさん売れました?

丸山:…売れない!あはははは。
石橋:売れないですよね、最初は。
丸山:売れないですけど、値段を下げました。高すぎたんです、昔。で、値段を下げて、コーヒー豆を買っていただいたお客さんには無料でカプチーノを出したんですよ。当時は、1杯500円とか600円する珍しい飲み物だったのに、100gの豆を、例えば家族5人で買いに来たら、5杯出してたんですよ。
スタッフからは「やりすぎじゃないですか」と言われたが「とにかく飲んでもらわなきゃしょうがない」と、コーヒーをふるまい続けた。また、軽井沢の別荘を利用する人たちが利用するスーパーマーケット「ツルヤ」に商品が置かれたことで「本格的に東京から注文が来るように」なったと話す。
「意外と短いスパンでドンと行ったんですね」という石橋に、丸山氏は「難しい話じゃなくて、美味しいコーヒーを飲みたいという潜在的要求はやっぱりあったんだなと思います」と振り返った。
日本のコーヒー文化を世界で認めてもらうために
また、日本人バリスタの世界チャンピオン育成にもチャレンジし続け、「日本人なんか優勝できない」と言われる中、2014年、丸山珈琲から世界チャンピオン(ワールド・バリスタ・チャンピオンシップ) を輩出。
丸山氏は、「最高の豆を扱って、最高のコーヒーを出していると証明できた」「日本のコーヒー文化、バリスタの力を証明できたということで、すごく感動しました」と回顧した。
生産者の生活を守るサイクル作りをしたい
石橋:丸山さんのこれからの夢は?
丸山:先程、例え話の中でワインが出てきましたけど、同じ場所で作り手がきちっとやって、毎年良いワインを作るのと同じレベルの仕事を、コーヒーの生産者もしているのに、相変わらず日々の生活に困っているような生産者が、実はいるんですよね。私は、恵まれたことに日本という素晴らしいマーケットでお店や仕事をさせてもらっているので、そのダイヤの原石を見つけてきて日本の人たちに喜んでもらって、その付加価値をまた現地に戻して彼らに良いものを作ってもらうというサイクルを。
石橋:世界平和ですね。
丸山:まぁそうですね。そうは言っても100パーセントはそうはならないですよ。でも、流通している物の中の10パーセントでも20パーセントでも、そういうやり方が定着していくならば、それはコーヒーだけじゃなくほかの商取引にも伝播していくことだし。
世界中の美味しいスペシャルティコーヒーを発掘し、日本に広めていくことで日本のコーヒー文化の向上、コーヒー生産者の生活向上に繋げていくことを誓い、「これをちゃんと確固なものにできたら引退できるかな」と笑った。
