“全員容疑者”とミスリードさせつつ、最後にはそれぞれが物語のピースにピッタリはまる
12月2日放送『シャーロック』第9話
無駄がない!!

『シャーロック』史上最多の“全員容疑者”状態だった今回は、その登場人物たちが何を喋ったのか?いつどこにいたのか?どういう話し方だったのか?どんな動作をしたのか?という脚本上の細部はもちろん、“あそこなんでカーテンで仕切ってんだろ?”というセットの細部まで、すべてに答えが用意されている一切無駄のないお話でした。

普通ここまで容疑者が集まると、匂わせるだけ匂わせて“あいつ何だったの?”で終わるミスリーディング要員ばかりになってもおかしくないのに、それぞれがちゃんとミスリードさせつつも最後には物語のピースにピッタリはまる見事なキャラクター配置だったので、ホントに何もかも全てに無駄がなかった!!

唯一無駄があったとすれば、今回のレビューは無駄がなかった謎の数々を列挙していこう!と計画したにも関わらず、謎フラグが立ちまくった物語の巧妙さにただただ感心するのみで、再生ボタンを3回押しただけに終わってしまった僕の午前中だけでしょうか…。いや、でも、それだけ楽しんだんだからそれすら無駄じゃない!!
とにかくキャラクターの時系列表とか、動線に沿ったセットの見取り図とか、ドラマの設計図が丁寧なんですよね。本当に設計図が存在するかはわからないけれど、そこまで作り込まれているんだろうな…と想像できる楽しさが『シャーロック』にはあるのです。

また今回はドラマ全体の構成としてもすごくユニークな回でした。
これまでを振り返ると、“旦那に「殺(や)れ!」とせまる狂気(第1話)”や、“実の息子にエンバーミング=遺体保存法(第5話)”、“必死の毒入りチョコレート(第8話)”など、誰が犯人なのか?という部分よりも、なぜ事件は起きたのか?の背景や過程にハードな物語をくっつけて僕を壮絶ブルーな気持ちにさせる…そのドラマチックこそが『シャーロック』だと思っていたんですが、今回のように誰が犯人なのか?の王道ミステリーを、もう最終回目前という第9話にして初めて見せるという遊び心。
しかも、“主人公が偶然居合わせた場所で事件発生”、“密室劇”、“全員容疑者”という王道三点セットですからね。王道なのに『シャーロック』では遊び心の変化球回に見えるという不思議。
ならば最終回まで残り2話はどんな見せ方をしてくれるのか?否応なしに期待が高まってきます。

そして“見せ方”と言えば、オープニングタイトルの“シャーロック”ですよ。第7話の“バーナーで燃やす”でさすがに見せ方も出尽くしたと思いきや、今回は“花の茎で書く”という想像だにしなかった超斜め上にきました。花の茎で書くって…どう考えてもおかしいはずなのに、“ディーンさん×花”という美しい同士の掛け合わせなので、なぜか違和感ゼロ。こっちも不思議。
そこまで来ちゃったら、一体最終回はナニで“シャーロック”の文字が刻まれるのか?今回しきりに“最後の晩餐”を繰り返していたので、まさか…。
いかんいかん、すごい不穏な想像をしてしまいました(自分の予想が当たってネタバレになってはいけないので寸止めにしておきます)。

ドラマの結末同様にそんなところにも想像を膨らませてしまいますね。みなさん、残り2話!一緒に見守りましょう!!
text by 大石 庸平 (テレビ視聴しつ 室長)