松本幸四郎、“祭”は「今年やることに必ず意味がある」日本舞踊未来座オンライン配信で作品への思いを語る
「第4回 日本舞踊 未来座=祭(SAI)=『夢追う子』」は、LINE LIVE-VIEWING にて、7月 1 日(木)20時から~7月20日(火)20時まで配信。
(公社)日本舞踊協会主催・制作の「第4回 日本舞踊 未来座=祭(SAI)= 『夢追う子』」が、コロナ対策を徹底し、6月4日(金)~6日(日)に国立劇場小劇場にて敢行されたが、5日(土)に行われた公演回を、7月1日(木)~20日(火)までの期間に、LINE LIVE-VIEWINGにて配信することが決定。
それを受けて、本作の出演・構成・演出を務めた松本幸四郎が取材に応じ、本公演に込めた思いを語った。

2017年、日本舞踊への固定概念を打破すべく、幸四郎ら日本舞踊協会のメンバーが十世 坂東三津五郎の遺志を継ぎ、“未来座”と銘打ち、立ち上げた同シリーズ。
タイトルの“SAI”には、継承と革新という「Succession And Innovation」という、日本舞踊の伝統をつなぎながら、”いま”こそ輝き、そして”未来” へと光を放つという願いが込められている。
今回、日本舞踊を全編、群舞で構成するという初の試みが行われた舞台を、初めて映像としてオンライン配信するが、幸四郎は「制作チームのいろんな知恵で、客席からは決して見ることができないアングルなど、いろんな角度で撮影されていて、個々の躍動感がすごくクローズアップされた作品になっています。これは映像じゃないと感じることができない」と手応えを感じている様子。
また、「群舞とはいえ、個々であることは、今回演出をする上でのテーマ。一色にするのではなく、“夢を追う”振り付けという共通言語がある中で、個としてそれを消化する。個の集まりが一つの大きな力になっているので、そういう意味では、表情が良く見えるのは映像作品ならでは。個々のキャラクターを映像でじっくり見てもらいたいです」とアピールする。

昨年は新型コロナウイルスの影響を受け、公演が延期に。6月4日の公演は、久しぶりに観客を前にした公演だった。
「2、3年この開催に向けてやってきたこともあり、やっとここにきたんだという達成感はありました」と明かしつつも、「僕は制作でもあり演出でもあり出演者でもあったので、それどころではなかったですね」と苦笑いしながら本音を。
続けて、「演出家として早い決断をしていかないといけないし、出演する際は年のせいでもないと思いながらも息が切れるし、汗が出て。でもそうやって作品にどっぷり浸かることができたのは幸せですね」と充実した表情を見せる。

リモート稽古で作品を作っていったが、「振りは隣や前で踊ることで覚えてもらうのが通常ですが、撮った映像を見て覚えていただいて。でも、日本舞踊協会の公演なので、いろいろな舞踊家の方がいらして。リモート稽古はLINEを使いしましたが、経験も年齢も幅があり、LINEもしたことがない、Wi-Fiも分からない人もいて、本当に全てが手探り状態でしたね」と回顧。
また、リモート稽古は1週間の予定が、非常事態宣言で1週間延びた。「そのあとに約10日間、対面のお稽古をしましたが、細かくグループ分けして、極力1度に集まる人数が少なくし、全員で全てを通したのは、1日だけ。その中でも、ゴールや方向性を探りながら、止まることはしなかった。日本舞踊を発信したいという、皆さんの思いで実現できたなと思います」と共演者たちに感謝する。

このプロジェクトは 日本舞踊の固定観念を取り払いたいという思いでスタートしたが、幸四郎は「日本舞踊は、静かでゆっくりというイメージがあると思うんです。もちろんそういうのもありますが、僕自身、あえて言うのであれば、日本舞踊の根本は、音に合わせて、リズムにのって体を動かすことだと思う。なので、どれだけ体を動かし続け、70分それを繰り返すことで一つの作品として成立したかった」と熱のこもった声色でコメント。
続けて、「今回、日本舞踊家でやる公演なので、どういう踊りを踊っても日本舞踊になる方ばかり。発想は自由にして、個性を生かしました。実際、ストーリーがあるものを見たいという声もありますけど、どれだけ踊り家がどれだけ汗をかいて踊ってるという、人のパワーを見てほしい。そういう作品は日本舞踊にはありますが、少ないだけで、今回新しいことは1つもないんです。けど、新しく感じていただける作品を、日本舞踊の技で構築したいと思って作りました」と打ち明ける。
そんな思いが通じ、観客からは「とにかく面白かった」「楽しい」という声が溢れた。「そんな声をきけたのはうれしいですね。僕としては必然的にできた作品。群舞で個性を生かすことはあまりないことですが、皆さんには個々が主役と伝えていて。日本舞踊にはいろんな形がありますが、それは敢えて統一しませんでした。それは皆さんがやってきたものを活かす、ひとつの武器だなと思っていらから。そんな力強さが溢れる作品になったと思います」と笑顔を見せた。

2017年の第1回公演から2019年の第3回公演まで、それぞれのキーワード・テーマをもとに表現してきた“未来座”。毎回、当て字を決めているが、第4回公演でのキーワードはSAI=“祭”。もともと2020年にする公演だったため、一昨年、オリンピックがあることで決めたが、今年やる上でも重要な意味合いを持ってるという。
「祭りは、騒ぐという意味がある一方で、神に対する祈りや捧げるという意味もあると思っていて。何もない世界から人が誕生し、成長することによって、夢を掲げ、それを目標にし、それに向かって歩み達成する。“祭”は人には必ずあるものだと思う。こういう状況になるとは想像していませんでしたが、今年“祭”という当て字にしたSAIを、また夢を追うものをテーマにした作品をやるのは、正直偶然ですけど、必ず意味があることで、今年しかできないことだったと思います」と力強く語っていた。
詳しくは、「第4回 日本舞踊 未来座=祭(SAI)= 『夢追う子』」公式サイトまで。