【宝塚OG劇場】彩凪翔 男役から女性へ、無意識の変化「表情が柔らかくなったと言われる」
10月27日(水)・28日(木)彩凪翔コンサート「Wings」/日本橋三井ホール
宝塚歌劇団の元スターに、輝く秘訣やこだわりを語ってもらう「宝塚OG劇場」。第4回は、雪組男役スターとして活躍し、2021年4月に退団した彩凪翔(あやなぎ・しょう)が登場。
宝塚在団中は「灼熱の彼方」でバウホールW主演、「春雷」では単独主演を務め、華やかな容姿と確かな演技力でファンを魅了。「ローマの休日」「るろうに剣心」「ファントム」など数々の作品で重要な役どころを担ってきた。
現在は、美容アイテムのイメージアンバサダー、映画「ハチとパルマの物語」の日本語吹き替え、9月には舞台「The Beginning of TAKARAZUKA LIVE NEXT!!『アプローズ』〜夢十夜〜」(以下「アプローズ」)で主演を果たすなど、多彩な活躍を見せている。
そして10月27日(水)・28日(木)に、コンサート「Wings」を東京で開催予定。今年6月に大阪で行った自身のバースデーコンサート、待望の再演となる。
そんな彩凪へのインタビューを前後編でお届け。前編では「アプローズ」を終えた現在の心境や、「Wings」東京公演の見どころを尋ねた。また、タカラジェンヌOGといえば、オシャレで個性的なファッションも魅力のひとつ。そこで本連載では、それぞれの“こだわりの一着”も紹介してもらう。
<【後編】彩凪翔 現役中から癒しは“動物”「『坂上どうぶつ王国』めっちゃ見てます!」>
<彩凪翔 フォトギャラリー全12枚>
退団したこのタイミングだからこそできる表現

――「アプローズ」を終えた今の気持ちはいかがですか?
コロナ禍というこの時期に、東京公演も大阪公演も無事に上演できて良かったと思っています。
宝塚在団の後半は、私は組内でも比較的上級生の立場だったので、大人な役や渋い役を演じさせていただくことが多かったんです。でも今回は、より等身大に近い自然な姿をお見せできたと思います。
退団して今の自分をさらけ出すという意味では、このタイミングでしかできない表現になったと思っています。退団から時が経つほど、私自身も髪型や仕草などいろいろなものが変わっていくと思うので、今しかできない表現の場を与えていただいたと感じています。
また、宝塚OGの活躍を支援するタカラヅカ・ライブ・ネクスト旗揚げ公演の主演を任されたことに対する責任も感じました。今回は出演者全員が宝塚OGで、ダンサーや振付家、歌手など、各フィールドのプロフェッショナルとなった方々が集結して1つの作品に打ち込むという空間が、すごく刺激的でした。
また、スペシャルゲストとして、私が下級生のときに雪組トップスターでいらした水夏希さんや、昔から尊敬している元月組トップスター彩輝なおさんとご一緒させていただいたことも夢のようで、本当にたくさんのことを学ばせていただきました。

――自身が演じたのは男性(少年)役で、共演者も宝塚OGの方々と、宝塚と共通点が多いと思いますが、本公演ならではの違いは感じましたか?
宝塚の良さは崩さず、それぞれの技量を発揮する場でした。ダンスの振り付けは、キャストで出演もしていた風馬翔さんに加え、海外でも振付家・ダンサーとして活躍されている森優貴先生が手がけてくださいました。
宝塚の男役は、キレ重視のカッコいいダンスが特徴です。しかし今回、森先生はバレエ寄りの、コンテンポラリーダンスのような振り付けを多く取り入れられたので、同じ男役のダンスでも、女性的な体の動線美、滑らかさを表せたと思います。卒業した今だからこそ、そして少年という役だからこそ見せられる、柔らかいダンスになったと感じました。
キーが高めの曲も歌えるように、自分に課す
――コンサート「Wings」東京公演への意気込みを聞かせてください。
これまでお世話になった東京のファンの皆さまに、感謝の気持ちをお伝えできることがすごくうれしいです。そもそも、宝塚退団直前に開催したディナーショーがコロナの影響で無観客ライブ配信になり、皆さまに直接お礼をお伝えできなかったことが心残りで、退団後はまずコンサートを開催しようということで始まりました。
そして6月に大阪で公演を催しましたが、東京の方から「行きたいけれどコロナ禍なので控えます」というお声をたくさんいただいて。「Wings」では、宝塚在団中はあまりできなかった構成・演出にも時間をかけてステージを作ってきたので、東京のお客さまにお届けできることが、すごく楽しみです。
――演出などは、大阪公演から大きく変わりますか?
大幅には変わらない予定ですが、千秋楽は日替わりゲストに透水さらささんが加わるので、曲目が変わります。ゆきえ(透水さん)とは、めちゃくちゃ仲が良くて。やっぱり同期で同じ雪組にいたので、いろいろな思い出があります。先日の「アプローズ」でも共演したので、「Wings」ではどんなステージになるか楽しみです。

――ほかの共演者の皆さんとは、東京公演に向けたお話はしていますか?
まだ顔合わせができていないのですが(10月17日取材時)、久しぶりに再会できるのが、すごくうれしいですね。6月の大阪公演で共演してからこれまでの間に、みんないろいろな経験を重ねていると思うので、その変化が楽しみです。また、各回にトークの時間があるので、どんなエピソードが飛び出すか…今から期待しています!
――彩凪さんも「アプローズ」出演を経て、東京公演では新たな一面を見せてくれるのでしょうか。
言葉では表せないですけれど…何かが変わる気がします(笑)。ちょっとした表情だったり、醸(かも)し出す雰囲気が、もしかしたら少し柔らかくなるかもしれません。でも「アプローズ」のときより、しっかり“男役”な雰囲気で歌うので、どうなるかはお楽しみです(笑)!
――やはり退団して、自身の雰囲気が柔らかくなったと実感しますか?
自分の中ではそんなに変わっていないし、あまり意識もしていないのですが、共演した方々が「表情がすごく柔らかくなった」と言ってくださって。雑誌の撮影などで、女性らしい写真を撮っていただくことも増えたので…って、もともと女性ですけれど(笑)。男役からちょっとずつ、なめらかに変わってきたのかなと思います。

――「Wings」セットリストの中で、お気に入りの曲はありますか?
好きな曲ばかりですが、この時期だからこそ前向きになれる曲や、宝塚時代に歌った思い入れのある曲、挑戦したかった曲を入れています。「Wings」ではキーがちょっと高めの曲をあえて入れています。「Corner of the sky」や「花火」、Official髭男dismさんの「宿命」とか。宝塚を卒業したので、いろいろな歌を歌えるように、自分に課そうと。
――歌える曲の幅を増やすのが目標ですか?
そうですね。やっぱり公演をさせていただくからには、何か挑戦を入れていかないと変わらないので。男役から女性になり、ちょっとずつ高い音も出せるようにトレーニングをしたほうがいいかなと思って入れました。
――お芝居での目標や、目指している女性像はありますか?
女性役は宝塚時代にも演じたことがありますが…ナチュラルなお芝居ができるようになりたいですね。米倉涼子さんや吉瀬美智子さん、長澤まさみさんのような、芯のしっかりしたカッコいい女性に憧れます。私は性格的にも背丈的にも、キャピキャピするのは似合わないと思いますし(苦笑)。
男役で学んだことが、これからのお芝居にどう役立つかまだわかりませんが、いろいろな役に挑戦したいです。あと、立ち回り(殺陣)にも挑戦してみたいです!
<こだわりの一着>

「UN3D.(アンスリード)」さんのシャツです。シンプルだけどちょっと個性的なデザインにハマっていて。「UN3D.(アンスリード)」さんは、宝塚を退団する数年前に、上級生の方に教えていただいて以来、好きですね。

今はまだ舞台やコンサートで男役を演じているので、衣装もボーイッシュなものが続いていますが、お仕事でスカートを履く機会も増えてきました。でも、私服でスカートはまだ履けていなくて。まぁ16年間も履いていなかったので(苦笑)。
先日、退団同期の方たちとリモートでお話ししたら、元男役の方は皆さんもう私服でスカートを履いたとおっしゃっていて。私はいつになるでしょう(笑)。
普段は、ゆったりしたシャツやモノトーンを着ていますが、これからはもうちょっと女性的な服に変わっていくと思います。「UN3D.(アンスリード)」さんも辛めテイストのお洋服が多いので、甘辛ファッションにトライしてみようかなと思います!柔らかいお色味も身につけてみたいですね。
<コメント&撮影メイキング動画はこちら!>
最新情報は、彩凪翔オフィシャルサイトまで。
撮影:河井彩美