【宝塚OG劇場】凰稀かなめ 「舞台上のすべてを把握しようとしていた」 ある上級生からの教え
宝塚歌劇団の元スターに、輝く秘訣やこだわりを語ってもらう「宝塚OG劇場」。第6回は、宙組男役トップスターとして活躍し、2015年に退団した凰稀かなめ(おうき・かなめ)が登場。
在団中は、「銀河英雄伝説@TAKARAZUKA」「ベルサイユのバラ」などに出演し、2007年には世界陸上大阪大会開会式に合わせて結成されたユニット「AQUA5」メンバーに選出。都会的で華やかなビジュアルと、巧みな演技力で人気を集めた。
退団後は舞台、映画、ドラマなど幅広く活動し、1月20日(木)からは、Voi Cine Walk®「よろずや探偵BOSS 〜K夫人の謎〜」に出演する。本作は、専用イヤホンを装着して屋外の各スポットをめぐることで、“探偵“としてドラマ仕立ての推理ゲームを体感できるサウンドアトラクション。
フジテレビュー!!は凰稀に、出演への意気込みや宝塚時代から変わらず心がけていることを聞いた。また、タカラジェンヌOGといえば、オシャレで個性的なファッションも魅力のひとつ。そこで本連載では、それぞれの“こだわりの一着”も紹介してもらう。
役作りで「よくお酒を飲むようになりました」

――Voi Cine Walk®「よろずや探偵BOSS〜K夫人の謎〜」出演オファーを受けときは、どんな気持ちでしたか?
Voi Cine Walk®とは一体どういうものかな…と、最初はちょっと理解するのが難しかったですが(苦笑)、新しいエンターテインメントだなと感じました。お仕事をいただけることはすごくうれしいですし、ましてや大好きなお芝居ができることが、本当にありがたいなと思いました。
――実際にサウンドアトラクションを体験してみていかがですか?
イヤホンで自分の声を聞いてみたら結構ハスキーというか、かすれているな!と思いました(笑)。
――スナックのママ・横峯友里恵役ということで、あえてママらしく、かすれ声にしたのですか?
いえいえ(笑)、演じているときは特に意識していなくて。でも聞いてみたら予想以上にかすれ声で、何か音声加工をしてくれたのかなと思ったんですが、そうではなく。撮影が早朝だったので、その影響かもしれません…(苦笑)。
――凰稀さんは役作りのため、その役に合わせて生活をガラリと変えるそうですが、今回は何か実践しましたか?
やっぱり飲み屋さんのママなので、よくお酒を飲むようになりました(笑)。もともとお酒は嗜(たしな)む程度ですが、ハイボールやビール、焼酎…何でもいけます(笑)。
あとは、ちょっと色っぽい雰囲気が出せたらいいなと考えました。スナックのお客さんと何かしら関係があったのかな…と感じさせるように。妄想を膨らませて役作りに挑みました。

――今回は映像出演もありますが、声の演技だけで伝える部分も大きいと思います。声の演技で、何か意識したことはありますか?
わかりやすくしゃべる、ですね。でもやりすぎるとお芝居が硬くなっちゃうかな…とか、声だけで演じるのは初めてだったので、いろいろ考えました。収録は基本的に1人ではなく、スナックのお客さん役・伊東孝明さんや、友里恵の母役・和泉ちぬさんと自然に会話しながらだったので、とても演じやすかったです。
吐きそうになるくらい“緊張しぃ”だけれど…
――舞台に立つ日に、宝塚時代から今も変わらず行っていることはありますか?
山ほどありますが(笑)、「公演当日は、朝起きてから開演するまでの行動と時間を毎日同じにする」と決めています。起きて、支度をして、家を出て、楽屋で食事をして、お化粧して、ちょっとゆっくりして、歯を磨いて、トイレへ行って…という行動ひとつひとつの順番と時間を、全部決めているんです。
また、宝塚のときは、舞台上のどこで誰が何をしているか全部把握するようにしていました。1組あたり80人近くの生徒がいますが、主要メンバーの誰がどこを通るか、舞台袖では誰とどのタイミングで会うか…など、すべてインプットしていて。もしいつもと違うことがあれば、何かしら対処できるじゃないですか。トラブルが起こったときも対応できるよう、常にアンテナを張っていました。

――トップスターとしての責任感から、舞台上のすべてを把握しようと考えたのですか?
その感覚になったのは、トップになる前、入団5〜6年目くらいからです。新人公演(※)で主演を2回務めさせていただいたのですが、その時は常に、本公演で主演のトップさんのそばにいて。動きを覚えたり、いろいろお話を聞いたり、お衣装さんと一緒に衣装替えを手伝ったりして、新人公演に備えていくんです。
(※)新人公演:本公演の演目を入団7年目までの生徒だけで上演する、若手育成の場。宝塚で1回、東京で1回の合計2回行われる。
例えば、そのトップさんがうっかり小道具を忘れたとか、何かいつもと違うことが起きたときに、先に気づいて対応できたら助けになるし、周りをよく見られるようになります。そのことを、当時のトップスター・朝海ひかるさんが教えてくださって、徐々に意識するようになりました。
――舞台に上がるときは、いつもどんな感覚ですか?
私はすごく“緊張しぃ”なんです。もう吐きそうになるくらい緊張して、震えあがって手も冷たくなっちゃって。でも開演ブザーが鳴り、音楽が流れた瞬間から、“無”になるんです。「こう演じよう、こう歌おう」と考えるような感覚がまったくなく、自然と“無”の状態になるんです。