江口洋介「コンフィデンスマンJP」赤星の描写の変化に葛藤「シリーズが続くならもう一度“ワルの赤星”を」
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“ドラマのフジテレビ”の意地を感じた「コンフィデンスマンJP」シリーズ
──キャストの皆さんが今作の脚本は何度も読まないと咀嚼できなかったと話していましたが、江口さんはいかがでしたか?
そうですね、なかなか複雑に入り組んでいるストーリーだけに、呑み込むのに少し時間がかかったかな。その分、ラストの抜けの良さが際立っている映画なので、爽快感も大きいというね。だけど、『英雄編』でこれだけ緻密なシナリオをつくっちゃうと、次回が大変だと思いますよ。これを超えなくちゃいけないわけだからね。演じる側としても、「次はどうなるんだ?」と期待されている分、大変になってきますよね。
ただ、「コンフィデンスマンJP」は底抜けに明るい娯楽映画ですから、極論を言えば難しいことを考えずにシンプルに楽しんでもらえたらいいな、と俺は思ってもいるんです。こういう時代ですし、現実のほうがさらに複雑だったりもするわけですが、何も考えずに大笑いできる、ぜいたくな瞬間が味わえる映画を劇場で観られるというのは、すごく素敵なことだと思いますし、エネルギーを注入して劇場をあとにしてもらえたら、うれしいですね。

──「コンフィデンスマンJP」は、シリーズの熱心なファンの方はもちろん、観る人を選ばず楽しめる作品ですよね。
しかもオリジナル企画で、ここまでシリーズを重ねられたというのは、熱烈なファンの方々のおかげでもありますよね。原作モノにも“ならでは”の面白さや楽しさがありますけど、オリジナルの企画で勝負できているということが、僕からしてもうれしくて。
連続ドラマが始まったとき、ちょっと宙に浮いたような世界観をどう表現していくのかなと思っていたら、(長澤)まさみちゃんを真ん中に、見事なまでに弾(はじ)けつつ跳ねた作品になっていって。一歩間違うと寒くなりかねない題材ではあったと思いますが、リアリティとポップな感じのサジ加減も絶妙でね。個人的には“ドラマのフジテレビ”の意地を感じましたね。
だから、その最初のエピソードに赤星栄介というキャラクターで呼んでもらえて、すごく誇らしかったんです。
そこで自分の出番は終わったと思いきや…劇場版にも連続して登場させてくれて。赤星はあくまで主人公3人を動かすためのフックであって、俺が出ない回があったしても、それはそれで全然構わないと思っているんですよ。でも、出てきたら何か起こしそうな雰囲気を持っている…そういうサブキャラって、演じていてすごく面白い。
キャスティングの時点から結構、冒険できるじゃないですか。「この役を、この人が!?」みたいに。今回だと、丹波という役を松重(豊)さんが演じていらっしゃるのが、その1つかなと。そうやって遊びを効かせながら、そのつど時代を感じさせるつくりになっているのが、「コンフィデンスマンJP」の好きなところです。

アジア圏でもたくさんの人が作品を楽しんでくださっていると聞いていますが、おそらく日本独特のポップな感じがあるんでしょうね。今、韓国ドラマがすごく人気ですけど、「コンフィデンスマンJP」の弾け具合も近いものがあると思うし、それでいて「日本のコメディ」ならではのセンスが感じられるところが、ウケているのかな、と。
田中監督はサブカルが好きな人なので、いろいろなカルチャーの要素が垣間見えるというのも魅力の1つであり、面白味なんじゃないかなと思います。
──長澤まさみさんいわく、「コンフィデンスマンJP」には「マツケンサンバ」的な昭和なポップさがあると。江口さんの話にも通じるのかな、と感じました。
なるほど、その分析は面白いですね(笑)。確かに、松平健さんが、あの歌の扮装で登場したとしても平気なくらいの受け皿が、「コンフィデンスマンJP」の世界観にはありますよね。その、なんでもOKというカーニバル的な抜けの良さが、この複雑で深刻になりがちな日常においても、明るさや元気をチャージできるような1作になっているのかな、と。
しかも、バカをやりつつも完成度が高い映画というところで、本当にたくさんの人に楽しんでもらえたらと願っています。
──最後に、江口さんご自身が体験された「ちょっとダマされちゃったなぁ」といったエピソードがあれば、お聞かせください。
そこそこ長く生きてくると、そう簡単にはダマされなくなるんですよ。通販なんかでも“バッタもん”かどうかを嗅ぎ分けられるようになりますし。散々、赤星としてダマされているので、自分自身は「絶対にダマされないからな」と、常日頃から脇を締めて生きています(笑)。

撮影:山口真由子
取材・文:平田真人
映画「コンフィデンスマンJP英雄編」は、公開中。
制作プロダクション:FILM
配給:東宝
製作:フジテレビ・東宝・FNS27社
©2022「コンフィデンスマン JP」製作委員会
最新情報は、映画「コンフィデンスマンJP英雄編」公式サイトまで。
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