死ぬことや視聴者を泣かせることをエンターテインメントの道具にしてない
1月16日(木)放送『アライブ がん専門医のカルテ』第2話
良かった~…
そんな第2話でした。
またしても素人以下の第一声で恐縮なんですが、ものすごくいろんな意味が詰まった「良かった~…」なんですよ?
「~」は自動販売機の「あったか~い」と同じような安らぎの効果があったことを表していて、さらにその後に「…」の“余韻”が入るんですね。通常の医療ドラマは「!」が多めなはずなのに、「~」と「…」が出ちゃうんですからすごく新しいですよね。ちょっと何言ってるか分からない解説になってますが、スーパードクターの活躍とか、手術が成功するとかしないとかに視点を向けず、病院に訪れる患者さんたちの“その後”をちゃんと想像させる医療ドラマになっているから新鮮だし、「良かった~…」ってなるんですよ。
そして「良かった」も、第1話以上にたっぷりありました。前回が期待以上だったので今回はどうなの?という心配を一蹴してくれたのが良かったし、木村佳乃さん演じる梶山先生の不穏な動きは医師としての良心からきていることだと色濃く描かれたのも良かったし(裏切らないですよね?)、その梶山先生が変装してまで心先生(松下奈緒)に近づこうとしていたという違和感をがん患者の高坂さん(高畑淳子)は気付いていたという細かな動きも良かった。
そして何より、今回の“乳がん”に関するエピソードのどれもが良かった。誰かが天才的な能力を発揮して手術に成功したり、根治に導いたりするわけではない、いい意味で主人公の心先生が活躍しないし、むしろ“がんサバイバー”であることが発覚した梶山先生が心先生に助言するという、主人公をスーパーウーマンにせず、登場する医師たちそれぞれが患者さんと真摯に向き合う事で希望と勇気を見出して、自身も少しずつ成長していく…ってなんて良いドラマ!

特に、中盤で訪れたセリフの全くないシークエンスがこのドラマの“良心の塊”でした。今回のゲストで寺脇康文さん演じる日ノ原に手を差し伸べてくれたおせっかいな紀子さん(ふせえり)が急変する描写を、それぞれの登場人物たちの日常に紛れ込ませた演出が素晴らしかった。おせっかいな紀子さんが亡くなるという描写はもっと煽って緊迫感を出して、なんならCMもまたいでショッキングに見せるという演出もあっただろうに、英語詞のおしゃれで癒されるサウンドトラックに乗せて、「ああ、みんな一生懸命生きてるんだな…」なんて思わせといて、その後急に亡くなったことが告げられるんだもの。
だからその死を煽らなかったことでより一層、死ぬまでに紀子さんがやっておきたかったことと、それによって残された人々が希望を持てたことが鮮明になって、このドラマが目指しているものがはっきりしましたよね。紀子さんが日ノ原さんに作ってあげた手編みのニット帽なんて、もっとイヤらしい演出にしたら、もっともっと泣かせる感じにだってできたはずなのに、描きたいのはそこじゃないんですよ。死ぬことや視聴者を泣かせることをエンターテインメントの道具にしないで、ちゃんと人間を描くことを目指しているんですね…。

そして、梶山先生の不穏パートの秘密を、もうこの段階で心先生に打ち明けようとするラストも良かったですね。その前段階であれだけ真摯に人と接していたはずなのに、すでに心を開く存在となった心先生には秘密を持ったまま…だと、視聴者もちょっと共感できないですしね…。っと思ったら心先生の旦那さんが急変って、これでもし亡くなってしまうようなことになったら、梶山先生は一生打ち明けられないままじゃないですかーーー!!??


やばい、まだ第2話の段階なのに、どっぷり共感しまくり。来週、どうなるの???今期一番楽しみなドラマになりました(暫定)。
text by 大石 庸平 (テレビ視聴しつ 室長)
第2話のあらすじ完全版はこちらから