『アフリカの夜』は「人生を見つめ直すきっかけになるかも」<信子と庸平>の本音対談【春ドラマ編】
『きらきらひかる』『タブロイド』『アフリカの夜』は、物語を貫く縦軸が通っているのが特徴
<信子&庸平の『春の名作ドラマ放談』>

右)当サイトの試写室でもおなじみのドラマ通ライターの庸平
――1999年放送の『アフリカの夜』は、庸平さんのオールタイムベスト3に入る作品だそうですね。

庸平:信子さんは、見たことないんですか?
信子:木曜10時の枠は、裏で『魔女の条件』(TBS/99年)をやっていたんですよね。滝沢秀明さんの色香にやられてしまって…。
庸平:『アフリカの夜』は1話が修学旅行と重なって、録画に失敗して見られなかった思い出があります。物語は、いろんな人が住んでいる「メゾン・アフリカ」というアパートを舞台にした群像劇で、その中に指名手配犯が潜んでいるんです。
信子:室井滋さんが演じる指名手配犯が、整形を重ねて逃走劇を繰り広げた福田和子みたいな設定で。
庸平:彼女はDV夫を殺しちゃって、整形して偽名でアパートに住んでいるんです。恋に破れた鈴木京香さん演じる主人公がそのアパートにやってきて、室井さん演じる世話好きのおばちゃんや、個性的過ぎる住人たちとやりとりをしながら成長していく姿がとてもよかった。
信子:その住人が、佐藤浩市さん、松雪泰子さん、ともさかりえさんと、とても豪華なんですよね。
庸平:ともさかさんは、佐藤浩市さんの妹役なんですけど、すごくいい味を出していました。プロデューサーの山口雅俊さんは、この作品の前に深津絵里さん主演の『きらきらひかる』(98年ほか)と、常盤貴子さん主演の『タブロイド』(98年)を担当したんですが、どの作品も物語を貫く縦軸が通っているのが特徴です。
信子:今作では、その縦軸を担うのが室井さん演じる殺人犯なのね?
庸平:室井さんの演技が、ものすごく刺激的で。ほのぼのとした群像劇を、グッと引き締めていました。でも高校生時代の僕には、最終回の展開は受け入れられなかった。大人になった今なら、女性だけでたくましく生きていくというメッセージを感じて、納得できるんですけどね。
あと、劇中にともさかさん演じる女の子が描く絵日記が出てくるんですけど、それを描いているのがフジテレビの社員なんですって!
信子:大木綾子さん。その後、ドラマの演出を担当して、今はプロデューサーとして活躍されています。私、この作品の脚本が大石静さんなのが、意外だったんですけど。
庸平:山口プロデューサーがプロットを考えていたところに、「山口さんと一緒に仕事をしてみたい」って大石静さんがおっしゃって、企画が実現したそうですよ。
信子:主題歌がSPEEDっていうのも、意外よね(笑)。
庸平:確かにちょっと違和感はありますけど、歌詞の中にはちゃんとドラマのテーマが入ってるんですよ。僕は、このドラマは『すいか』(日本テレビ/03年)と対になる作品だと感じていて。
信子:小林聡美さん主演のドラマよね。確かに、個性的な女性が集まる下宿が舞台っていう設定は似ているかも。
庸平:『すいか』にも、ともさかりえさんが出ているし、小泉今日子さんが指名手配犯の役で出ているんですよね。どちらの作品も、人生失敗したかなと考え始める妙齢女子の日常に、指名手配犯という非日常が挟まることで、逆に彼女たちのリアルが際立つ名作でした。人生を見つめ直すきっかけになると思います。
信子:なるほど!『アフリカの夜』はFODで配信中ですよね。庸平さんの話を聞いてたら、私も見たくなってきました。