宇梶剛士 グレた過去とチャップリンとの出会い、そして俳優の道へ
毎週水曜22時~『ナンバMG5』
大好きだった野球を取り上げた、大人への不信感と怒り

──宇梶さんはどんな青年時代を過ごしていましたか?
振り返ると、10代の自分を支えていたものは、大人に対する不信感と怒りでした。
高校生の時に野球部に所属していましたが、1年以上にわたって先輩たちから激しい暴力を受け続け、100人以上いた仲間が25人にまで減ってしまったんです。僕は「野球がやりたい」という一心でなんとか耐えていたけど、それでも限界が来て告発したら、なぜか学校は「暴力はほぼ無かった」と。それどころか僕が首謀者となって野球部に対して謀反を起こした、ということになってしまって。
理不尽極まりないですが、強豪校でしたし、不祥事を学校の外に絶対に出すまい、という“大人の対応”だった、の一言に尽きると思います。そうして2ヵ月もの間、グランドには出られても、野球をすることは禁じられまして。
失意の中帰る道すがら、駅前に暴走族がたまっていて、それまでは挨拶程度でやり過ごしていたんですが…。
僕は決して不良少年ではなかったんですよ。でも、自分がガキ大将だった頃の仲間や子分がその暴走族にいたので、次第に一緒に行動するようになって。そこで彼らから、暴力団の食い物にされているという話を聞いて、じゃあ俺が話をつけにいってやる、となり…。結果、大きな事件になってしまいました。

──大人から理不尽に押さえつけられると、子どもは反発するものですよね。
そうですね。社会において、ルールやマニュアルなど、人間はさまざまな形で均衡を保とうとするものですが、僕は「してはいけないこと」よりも「したほうがいいこと」を教えるほうが大事だと思うんです。
規則や法律を制定して「こうやってはいけません」と、いくら細かく張り巡らしても、日常が息苦しくなるだけで、結局は網の目をくぐって裏に回る。そうではなく「こうしなさい」という生き方や考え方を、大人がきちんと若者に教え、示していかないと社会はなかなか変わらないのではないでしょうか。
「暴力はいけません」「差別はいけません」と、その場しのぎの薄っぺらい言葉を並べるのではなく、嘆くよりも考える、考えればやがてそれが行動につながっていくと僕は信じています。
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