宇梶剛士 グレた過去とチャップリンとの出会い、そして俳優の道へ
毎週水曜22時~『ナンバMG5』
俳優になろうと決めたきっかけは、チャップリンの伝記
──俳優を目指すきっかけは、なんだったのでしょうか?
俳優の道を志すようになったきっかけは、少年院に入っていた時に母が差し入れてくれたチャップリンの伝記です。それまでは面白くて、世界的スターで、大金持ちで、豪邸に住んでて、成功者として何不自由なく暮らしているイメージでしたが、伝記を読むと、子どもの頃、父親が家族を捨てて家を出てしまい、どんどん貧しくいく中でも俳優になる夢をあきらめず、チャンスをつかんでいく、とんでもない努力の人でした。
当時の僕にとって、“未来”であり“生きる原動力”になっていたのは「野球」でしたから、それが無くなったことはとても大きく、グレにグレて気づいたら檻の中にいた。留置所と鑑別所合わせて50日、少年院に4ヵ月。自分の足元を見つめ直し、高校受験に挑戦しようかと思っていたタイミングで、チャップリンの伝記と出会ったんです。
団地に住んでいて、親がなかなか家に帰って来なかった寂しさと、周りから同情され心配される恥ずかしさを抱えながら生きていた自分自身の姿と重ね合わせると共に、チャップリンはあんなに努力したのに、いったい俺は何やっているんだ、と。もう泣いて泣いて自分の中のコールタールのような、ヘドロのような汚い感情をすべて流し出し、「俳優」になると決めました。

生きる原動力だった野球を無情にも取り上げた大人への憤りを募らせ、道を外れてしまった苦い過去。そこから見つけ出した「俳優」という一筋の光。自身の経験を踏まえ、静かに熱く語ってくれた宇梶さん。 後編では恩師・菅原文太さんとの運命的な出会い、映画・劇場版「永遠ノ矢トワノアイ」の制作秘話について迫ります。
撮影:河井彩美
取材・文:中村裕一
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