「どんなに自分が正しくても暴力は悪」宇梶剛士の心に刺さった菅原文太の言葉
毎週水曜22時~『ナンバMG5』
自身のルーツであるアイヌをみつめる
──宇梶さんが作・演出を手がけた舞台「永遠ノ矢トワノアイ」が劇場版となって3月に北海道・札幌で上映。さらに、この6月から北海道内9ヵ所の劇場で上映されるそうですね。
この作品は、僕が主宰する劇団パトスパックが2019年に高円寺で上演した舞台作品で、2021年には北海道7ヵ所での上演を予定していました。しかし、コロナ禍で3ヵ所の上演になってしまったんです。
アイヌ関係者や北海道の皆さまの「ぜひ、うちの地元で上演してほしい」という声に応えてのものだったので、なんとかならないかと考え、釧路の公演に5台のカメラを入れて上演記録映画を作りました。
2018年、北海道を命名した松浦武四郎さんの生誕イベントのトークショーに、母親と生まれて初めて一緒に出演しました。ちょうどそのとき、劇団の制作から次の舞台の企画書の提出を迫られ、とっさに僕は「都会のアイヌ」と書いたんです。アイヌの血が流れていながらアイヌのことを知らない青年が北海道に渡り、アイヌたちとの交流の中で自分を探す──。これってまさに僕のことじゃないかと。
ほどなくして2019年、松本潤くん主演のドラマ『永遠のニシパ~北海道と名付けた男 松浦武四郎』(NHK)でアイヌの長老のエカシという役を演じ、2020年に北海道白老郡白老町に開業したアイヌの歴史や文化を学び伝えるナショナルセンター「ウポポイ」(民族共生象徴空間)のPRアンバサダーに就任。
こういったこともあって、僕の中でくすぶっていたアイヌに対する気持ちや関わり方がこの数年で一気に広がりました。
【思い出の品】クマがモチーフの指輪

この指輪はクマをモチーフにアイヌ文化を伝承するアーティストが作ったものです。
クマはアイヌにおけるカムイ(神のような存在)の中でも位が高い動物です。いかつい輩に見られるのが嫌で、この手のアクセサリーはなるべくしないようにしてきたのですが、50歳も半ばを過ぎたので、もうそろそろいいだろうと(笑)。裏側が肉球のデザインになっていて、かわいいんですよ。

恩師と出会い、俳優という仕事に打ち込み、映画を通し自身のルーツであるアイヌと向き合う宇梶さん。甘党としても有名とのことで「この世で一番好きな甘いものは?」と聞いてみました。
すると、「こしあんの柏餅ですね。それも草もちではなく、白くて薄い餅。葉っぱを静かにめくるところから想像しただけでも、もう美味しいですよね~(笑)」と、この日一番の笑顔を見せました。
撮影:河井彩美
取材・文:中村裕一
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