森川葵「簡単に人は人を捨てない」『ザ・ノンフィクション』で気づいたこと
8月7日(日)14時~『ザ・ノンフィクション』※関東ローカル
<森川葵 インタビュー>

――読んでいてつらくなるような場面はありましたか?
統合失調症の男性が、自宅では抑えていても、「いしいさん家」に来ると暴れてしまうというところで、石井さんに対して甘えているからなんだろうと思って。
石井さんも男性を理解して、受け入れようとするけど、それでまた男性を甘えさせてしまってうまくいかなく、いたちごっこのようになってしまう場面は、読んでいてつらかったです。
お互いを思い合っているはずなのに、歯車がうまくかみ合わなくて、つらい思いをしてしまう。胸が苦しくなりました。
――前後編のナレーションを読んで、気づいたこと、学んだことはありますか?
愛情です。その人のいいところをちゃんと知っていると、その人がどんな状態になったとしても、相手を好きでいて、思いやることができるんだって。簡単に人は人を捨てないんだって。
こうやって元気に生きていると、ちょっと仲が悪くなったら、簡単に疎遠になっちゃったりしますけど、でも、介護や障がいといった壁があることで、その人のいいところを理解しようとして、そうすることで逆につながりが深くなることがあるんだって。
困難な状態にあるときほど、愛情を感じたり表現したりするきっかけになるのかもしれない、と思いました。
――介護についてはどんなことを感じましたか?
石井さんがおっしゃっていたように、死が近づいてきている年齢になったら、(制限を課して)つらい思いをさせるのではなく、好きなように自由にさせてあげたいという。
自分の母親に置き換えて、もし母が外出したいというなら(困難があっても)そうさせてあげたいし、薬を飲みたくないというなら、本人の意思を尊重してあげたいと私は思います。
そうやって、本人の意思をそのまま受け入れてくれる施設があるというのは、本人はもちろん、家族にとってもありがたいことですし、こういう施設が増えたらいいなとは思いました。ですが、現実はすごく厳しいんだ、ということもわかりました。
――いしいさん家は、“ありのまま”を目指していますが、森川さんにも“ありのまま”という、自然体を感じます。そのあたり、どのような意識がありますか?
自分でイメージを作り上げてしまうと、それを守らなきゃいけなくて、疲れちゃうんじゃないかな、と思っています。
お芝居をするときにでも、(イメージとの落差を)嫌だな、と思う気持ちが湧いてきてしまうんじゃないかなって。
だったらもう、自分を作るのではなく、出してしまうことで、どのくらいの方に受け入れていただけるかわからないですけど、苦しむよりいいかな、と思って、いつからか、自分を偽らないようになりました。
やっぱり、そのままでいられることが人間にとってストレスフリーな状態ですので、ありのままっていうのはすごく大事なことかな、と思います。