<試写室>この脚本で勝算があって画まで浮かぶとか「パパ恋」クリエーター陣マジすごない?
2月29日(土)23時40分~オトナの土ドラ『パパがも一度恋をした』第5話
全然、野島伸司じゃねー!
先週のレビューで書いた、野島伸司脚本の名作『101回目のプロポーズ』的展開が最後に待ち受けていた!…つまり、死んだ恋人に似た人物が現れて、愛は見た目に宿るのか?魂に宿るのか?という哲学モードに入る!?と思いきや、全然そうじゃねー!だけど最高ー!!
このドラマ、これまでも相当ヒドかったけど、今回は群を抜いてヒドかったですね。特に脚本!
あ、文句言ってるみたいですが、もちろん、このドラマにおいてはほめ言葉なんですよ?
そのヒドさを、若干ネタバレしつつ解説すると…
おっさん多恵子(塚地武雅)がチンピラ(しかも昭和の)に絡まれて危機一髪!
だけど、おっさん多恵子が突然サンバを踊りだし、危機を乗り越える!!

なんで、こんな意味わかんない脚本が書けるの!?そしてどうしてこのあらすじで脚本会議が通るの!?プロデューサーさん読んでないの!?そうだ、きっと今回の脚本、あまりにハイテンションの中で書き上げて、それでその勢いのまんま、脚本家から直で印刷所に回されたんだろうな。うん、そうとしか考えられないぶっ飛んだ あらすじ!

興奮しすぎて言葉荒めになってますけど、もちろん、これも全てほめてるんですよ?だって、このシーン、最高なんだもん。
突然に、ホントになんの脈略もなく突然に、昭和のチンピラに絡まれるというコッテコテの展開にかぶせてくるのが、サンバで解決という異次元。もう前衛的すぎて、唐突とか、コッテコテとか、バカバカしいとか、そういう固定概念を一気に飛び越えて、芸術的!とすら思えてくるもん。

それに、この意味不明な展開、この第5話のオチの完全ネタバレだっていうのに、意味不明だからこそ、逆に見たくなってきません?チンピラに絡まれて、サンバですよ?想像してみてください。それをどうしたら楽しめるのよって思ってるあなた!そうやって低めにハードルを設定している人こそ、振れ幅が大きすぎてとてつもない感動が待ち受けます。乞うご期待!
少しネタバレさせちゃいましたが、このサンバで危機を乗り越える瞬間と、その直後のオチ、そして今回再び登場したテニススクールの宮下コーチ(黒木啓司)のリアクションも含め、最高のエンディングになってるので、万が一、「ネタバレしたからいいや…」って思った人も絶対見てね。それだけじゃないから。
あー、やっぱり、思い出しただけでマジでヒドい。この意味わかんなすぎるシーンのために、サンバを練習したとかホントヒドイよね。このドラマのスタッフさん、鬼だわー。どういうテンションで小澤(征悦)さんと塚地さんに「サンバのレッスン受けて下さい」って話すんだろう。「まず、チンピラが現れます」「その後にサンバで乗り越えます」って、そのチンピラとサンバの距離感を理解するのには相当な時間と読解力が必要なのに、よくそこで「はい、わかりました」って、サンバの練習に入れるよね。マジでプロだわ。それで、その脚本段階ではイチかバチかなはずのシチュエーションを見事に体現して、映像化して、大成功させるんだもん。ホントに演者さんもスタッフさんもプロだわ。

僕もドラマが大好きなので、ドラマ作りとかちょっと憧れてて、自分だったらどうする?みたいなことを想像するけれど、さすがにこの脚本が上がって来て「よしこれでいこう!」ってなる勇気ないわ。この脚本で勝算があって、なおかつ画まで浮かぶとか、「パパ恋」クリエーター陣マジすごない?
ついつい、サンバのくだりでいつも以上に興奮してしまいましたが、前回から引き続いている肝心の「愛は見た目に宿るのか?魂に宿るのか?」問題については、この作品らしい、最高に笑えて、想像の斜め上過ぎる超展開を繰り広げながら、見事な形で決着させるのでご安心下さい。
そして今回、塚本高史さん演じるトカちゃんがトンデモない名言を残したのでここに記しておきます。
パパの前に多恵子そっくりの別人多恵子が現れたことに対して、
「それって、うんこ味のカレーじゃん」
もう最低!トカちゃんマジで最低!!
だけど…なんでだろう…すごく味わい深い…。
これぞまさに「パパ恋」!
そいでもって、なんなのこのドラマ最低!っと思ってエンドロールが流れ始めたら、なんだか感傷的になっちゃうラストで終わって来週も見逃せなくなります。スゲーなこのドラマ!
text by 大石 庸平 (テレビ視聴しつ 室長)