<試写室>テンションが…って混乱してたら設定に関わる大きなミステリーと感動が!
3月7日(土)23時40分~オトナの土ドラ『パパがも一度恋をした』第6話
『最後に“ん”のつく言葉でするしりとり』
ルール:
最後に“ん”がつく言葉を言い合うしりとり。
“ん”の前につく言葉でしりとりをし、成功した際は「良かったね~」と互いの両手をタッチしながら喜びを分かち合う。
例:
れんこん→こちょうらん→お互い「良かったね~」と喜びを分かち合う
成り立ち:
人間が作ったルールによって虐げられ、牢獄の中に閉じ込められていた“ん”の付く言葉たちを救済するという、多恵子が考えたとても心優しいしりとり。
はい。皆さん、冒頭からポカーンとしたことでしょう。
このかわいらしいんだかクレイジーなんだかよくわかんない、多恵子(本上まなみ)考案の「“ん”のつくしりとり」ですが、なんとこの第6話の終盤で、とてつもない感動を巻き起こします!
僕、あまりの喜びと感動で、え?まさか?出ちゃう?“ん”のつくあの言葉出ちゃう?出るよね?出るに決まってるよね?え?その前段階の言葉が「ひこくにん(被告人)」?どういうこと?なんで被告人?おかしすぎる!でも、来るよね?今しかない!来たーーーーー!ってなって、すっごくときめいてしまいました。ちょっと恥ずかしい。僕も、いいおっさんなのに…。
なんかいつもふざけまくってるから、え、ちゃんとこれ、計算してたの?って疑っちゃうんですが(失礼)、いずれにしろ、終盤に向けて舵を切るには最適な回になってます。
さて今回の第6話ですが、前回ラストでおっさん多恵子(塚地武雅)には現世に残る期限がある…?と意味深なラストを迎えときながら、多恵子の中学時代の親友・えみこ(紺野まひる)が登場するという、一歩間違えれば「早く話進めろよ」とイライラしてもおかしくない構成なんです。だけど、中学時代の多恵子とえみこの突然の友情物語の中に、さっき紹介したしりとりから醸し出す“多恵子らしさの強調”、謎すぎるからこそ“二人だけが知っているという事実”、そして“多恵子は確かに生きていたという証”が浮かび上がってくる…という、前回の“期限のチラ見せ”をさらにドラマチックにしてくるんですよ。

そしてさらに、おっさん多恵子の「へいらっしゃい!」から始まる「不思議寿司」なる謎儀式も突然展開されるんですが、それはさっきの“二人だけが知っている事実”にもつながるものとはいえ、その情報を整理するだけでも精一杯な中、矢継ぎ早に、おっさん多恵子が「いいから乳揉ませろや!」と怒鳴り散らすという、ショッキングすぎて、これも何かの儀式?ってなるシーンも織り交ぜてきて視聴者を再び大混乱に陥れます。でもそれが実は、前回の“あるシーン”を重ねることで、“おっさん多恵子になってしまったミステリー”をも浮かび上がらせてくるんですよ。すごい。

また多恵子が編み出した「“ん”がつくしりとり」と「不思議寿司」にはその解説と、ちゃんとしたドラマが用意されているんですが、前半に挿入される多恵子とえみこの中学時代を回想した“ある不思議映像”については、ラストで「うん、天井の歩き心地、まずまずだね!」という全然説明になってないセリフのみで終了します。

だけど何も説明せず、想像させることで、不思議さが増幅し、なぜパパは多恵子を好きになったのか?なぜ多恵子はおっさんになって蘇ったのか?というドラマ全体の不思議まで包み込むような余韻にもなってくるんですよ。これまたすごい。

ああもう!今回は(今回も?)かなり説明が難しい回。これだけ読んだら、何言ってんの?という方も大勢かと思います。だけど第6話、是非見てみてください。テンションがおかしすぎる!って混乱してたら、そのテンションの中にはこのドラマの設定に関わる大きなミステリーと、大きな感動が隠されているんです。そんなドラマ体験ができるの、『パパ恋』だけですよ。
そしてラスト、前回と同じ状況のはずなのに、今回のお話を見たあとだと、さらにすっごく寂しい気持ちになるんですよ…。ああ、もうすぐ終わっちゃうんだなー。
text by 大石 庸平 (テレビ視聴しつ 室長)