吉岡秀隆がドラマに与えたハンパない深み<信子と庸平>の本音対談【『Dr.コトー診療所』編】
吉岡秀隆=純だけじゃない!『北の国から』との接点が続々判明
<信子&庸平の『Dr.コトー診療所』徹底放談>

右)編集・ライターとして多くのメディアで取材、執筆中の信子
――映画公開を前に過去シリーズを見直したそうですが、改めてどんな感想を持ちましたか?
庸平:僕は『Dr.コトー診療所』(以下『Dr.コトー』)の第1シーズンがすごく好きだったんです。演出の中江功監督も大好きだったし、脚本の吉田紀子先生は『成田離婚』(97年)、『お見合い結婚』(00年)、『できちゃった結婚』(01年)などの作品をよく見ていて。
信子:吉田先生の「結婚シリーズ」!上質なドタバタラブコメディで人気でしたよね。
庸平:吉田先生は倉本聰先生による脚本家養成所「富良野塾」の出身なので、“倉本聰み”がすごいんですよ。『Dr.コトー』でも、人情の描き方や手紙の使い方に『北の国から』(81年〜02年)へのオマージュを感じました。中江監督も倉本先生脚本の『北の国から』の助監督の経験者なので、カット割りなどもどこか『北の国から』っぽいと感じます。
信子:ああ、だから『北の国から』で純を演じた吉岡さんが、コトー先生役でハマったのかもしれません。ちなみに、『北の国から』っぽいカット割りって?
庸平:例えば、剛洋(富岡涼)ら子どもたちが、東京行きを思い付きみんなで小銭を出し合うような、なんてことないシーンも、細かくカットを割っていろんな角度から撮影するからすごく臨場感が出る。中江監督は『眠れる森』(98年)や『リップスティック』(99年)も担当していますが、やはりカット割りが独特なんです。
あと、せっかく自然豊かな美しい景色の中で撮影するなら、それを最大限生かした映像を撮りたいって、そこは妥協しなかったそうです。
信子:お陰であんなに映像が美しいのね。人情味あふれた物語なのに、全員がいい人なわけではなくて、辛らつな部分を持っていたり、失敗したりすることもある。一筋縄ではいかない人間ドラマが展開するところも、『北の国から』に通じますね。
――2人のお気に入りのキャラクターといえば?
信子:私は、時任三郎さんが演じた漁師の剛利と、息子の剛洋のエピソードが大好き。剛洋には、何度泣かされたことか。東京に帰ってしまったコトー先生を呼び戻すために、わずかな貯金を使おうとするエピソードは、号泣ものでした。
庸平:剛洋、とにかくかわいいですよね。時任さん演じるお父さんも、今見ても全然変わっていなくてカッコよすぎました。

信子:第2シーズン(「Dr.コトー診療所2004」)では、成長した剛洋が東京の学校に行くんだけど、勉強についていけなくてちょっと闇を抱えちゃうのよね。
庸平:でも、学校を辞めたりせずにちゃんと頑張って。偉かったですよ。

信子:コトー先生みたいな医師になりたいという剛洋の夢を叶えるために、剛利が船を売ったり、出稼ぎに出たり。あの父子の全部が好きでした。
剛洋を演じた富岡涼さんは、ドラマシリーズが終わった後に俳優を引退したんだけど、今回の映画で1作限りの復活をしてくれるのがうれしくてうれしくて。
庸平:29歳の富岡さんがどんな大人になっているのか、楽しみです。
信子:大塚寧々さん演じる茉莉子の息子・竜一役で出演していた神木隆之介さんと、富岡さんは同じ年齢。神木さんも天使のような可愛らしさだった。
庸平:都会暮らしで洗練された竜一と、素朴な剛洋が対照的でしたよね。
信子:富岡さん、この映画1作のために(俳優業に)戻ってくるというのが、『北の国から』で正吉を演じた中澤佳仁さんとリンクするのよね。私は正吉推しなので、そういう意味でも映画で剛洋と再会できるのがうれしいの。
庸平:(『Dr.コトー』の)作品自体が、剛洋の物語でもあるんですよね。そう言えば、剛利がちょっと情けないお父さんで、だまされちゃったりするのも、『北の国から』感があると思いませんか?
信子:確かに。私は勝手ながら、吉岡さんのことを「純」(『北の国から』で吉岡さんが演じた役の名前)って呼んでいるんですけど、「純」が出ている作品は“間違いない”と思います。
庸平:「間違いない」つながりで言うと、僕は中島みゆきさんが主題歌を歌った『家なき子』(94 ・95年/日本テレビ)や『聖者の行進』(98年/TBS)で育った世代。中島みゆきさんが主題歌を歌っているというだけで、“間違いない”と思ってしまいます。
信子:ああ、わかる。主題歌が流れるタイトルバックだけで泣けるもの。
庸平:『Dr.コトー』の主題歌(中島みゆき「銀の龍の背に乗って」)は、イントロも歌詞も、悲しいエンディングにも違和感がなくハマるんだけど、やっぱり希望を与えてくれるんですよね。
信子:それが中島みゆきマジック!映画でも主題歌は変わらずだそうですから、泣けますよ、絶対。

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