【眼福♡男子】Vol.15 荒木宏文<お仕事編>「2.5次元界で若い役者が迷子にならないよう、導ける存在になりたい」
俳優デビュー15周年を迎えた荒木宏文が、記念のフォトブック「History」(東京ニュース通信社刊)をリリース。衣装はすべて自身でスタイリングし、カメラマンも自らオファーしたというオールセルフプロデュース作品で、彼は何を表現したかったのか――。15年間の思いと今後について尋ねた。
「History」には、僕がやりたい2Dのエンターテインメントを詰め込みました
――渾身のフォトブック「History」が好評発売中ですね。
このフォトブックは、僕がデビュー15周年を迎えた2019年6月から約1年をかけて「アニバーサリーイベントをやりましょう」ということを発端に始めたプロジェクトの第3弾になります。
ちなみに第1弾はバースデーイベントで、第2弾は同じ事務所の鈴木裕樹くんと以前(BSフジで)やっていた『ズキ☆アラ』という番組を復活させること。エンターテインメントにもいろんな形があるから、僕の表現したいものを詰め込もうということで、第3弾はフォトブックを作りました。
――写真集としては、約10年ぶりのリリースだと聞きました。
僕自身、もともと写真集というものに抵抗があって、最初はなかなかイメージがわかなかったというのが正直な気持ちです。
事務所の後輩でもある瀬戸康史が30歳になった時にアーティストブックを発売して、僕も同時に写真集のオファーをいただいていたんですが、「ちょっと考えさせてほしい」と答えを保留にしていました。
そんな時に瀬戸と食事に行き、アーティストブックをどんな目的で作ると決めたのか、実際に完成したものを手にしてどう感じたかなど、感想を聞いたんです。「そういうアプローチで、きちんと意味を持たせたものになるのであれば、挑んでみるのも面白いかも…」と思い始め、制作することを決めました。
――オールセルフプロデュースということで苦労された部分もあったかと思いますが、特にこだわったのはどんなところでしょう?
僕は2.5次元作品によく出演しているので、2Dのエンターテインメントで何をやれば面白くなるんだろうということから考えました。そして、最初に浮かんだのは僕がこれまで出演してきた作品の、イラストレーターや漫画家の皆さんに“荒木宏文自身”を描いていただくこと。これは必ず入れたいと思いました。
家族の喜ぶ姿を見ることが、僕のメンタルの支えになる
舞台上では洗練された“美”を表現することの多い荒木だが、フォトブックには、あくびをする姿や、不意打ちでシャッターを切られた時の表情など、ナチュラルで無防備なショットがあふれている。
そして、ロングインタビューには彼ならではの人生観も。ストイックすぎる生活の裏に秘められた発散方法には、つい驚きの声をあげてしまった。
――タイトルの「History」には、「Hirofumi+i(愛)+story」という意味も込められているんですね。
「History」=歴史ということで過去15年間の写真で構成することもできたんですが、すべてを撮り下ろすことに意味があると考えたので、時の流れを1日に置き換えて、朝から夜までの時間の経過を誌面で表現することになりました。
そして、縁のある方との対談も、朝なら崎山つばさくん、昼なら瀬戸康史、夜なら松岡充さんとそれぞれシチュエーションごとに相手をセレクトさせていただきました。
――お三方との対談も興味深いものでしたが、荒木さんの1万字インタビューに「人生MAX50年と考えている」という記述があり、特に印象に残りました。
今、人生100年時代と言われるじゃないですか。この世界において僕みたいな人間は、人の倍頑張らないと渡っていけないと思うので、「人生MAX50年」という表現を用い、常に人の倍速で生きることを目標にしているんです。
――倍速だと疲れも2倍になりますよね…。
そうですね(苦笑)。だから、体調を崩すこともありますし、疲れは一気に出ます。現在、40歳の少し前なので、人生50年と考えた残りが十数年。今が折り返し地点を過ぎて、一番キツイところです。
――日頃の体調管理はどんなふうにしているんですか?
2.5次元作品をやっている時は、2Dの容姿を手に入れるために食事制限をしているので、負荷はかなりあります。食べたいものも食べられないし、自然と動物のエサみたいな食事になってしまいます。
――そんな生活だとフラストレーションが溜まると思うのですが、どんなふうに発散しているんですか?
食欲に関しては、食べたいものや旬のものを毎月両親に送るようにしています。せめて僕の代わりに、家族に美味しいものを食べてほしいなって。そうすることによって、「僕は東京できちんとお仕事できています。ちゃんと稼いでいます」という意思表示にもなるので。
そして、向こうから「届いたよ。美味しかったよ」という連絡をもらうことで、欠かさずコミュニケーションが取れる。家族が喜んでいる姿を見ることが、僕が仕事を頑張るモチベーションになり、メンタル面での支えになるんです。
自分がやるべきことを見つけ、40歳になるまでのプランをきちんと組み立てていきたい
デビュー当時は戦隊モノにレギュラー出演し、そして、D-BOYSの仲間たちと結成したユニットD☆DATEのメンバーとして音楽活動も行っていた荒木。
最近では超人気コンテンツとなった、ミュージカル『刀剣乱舞』のにっかり青江として新たな魅力を発揮しているが、30代後半となった今、どんな予想図を描いているのだろう。
――正確には昨年が俳優デビュー15周年だったんですよね。振り返ってみて、どんな15年でしたか?
(事務所の)渡辺ミキ社長とともに歩んできた15年ですね。社長のことを東京の母だと思っているし、社長とずっと仕事をしてこれたのはとても幸せなこと。
社長にしてみたら、僕みたいな人間はすごく面倒くさかったと思うんですよ。デビュー当時から自分のビジョンをはっきり主張していましたから。右も左もわからない新人が生意気言ってるようにしか見えない状態が数年間続き、時には頭を抱えさせてしまうことや親子ゲンカみたいなことをしていた時期もありました。
それでも社長は僕のことを見捨てずに、マネージメントをしてきてくれた。これまで僕が続けてこられたのは、間違いなく社長のおかげです。
――そして、今年の6月で17年目に突入です。今、やりたいことはありますか?
ひとつの目標として掲げているのは声優業にチャレンジすることです。お話をいただくだけじゃなく、オーディションを受けてでも取りに行きたいと思っている仕事です。
他には、これは数年先のビジョンになると思うんですけど、2.5次元作品がここ数年のブームで商業的にも成功した一つのジャンルになっているじゃないですか。2.5次元作品を演じるためにこの世界に入ってくる若い子たちもたくさん出てきていて、彼らは出演することをゴールに設定している。
でも、役者という仕事で考えたら、それは一つの仕事であってゴールにすべきところではないんじゃないかなって。役者になったのならば、もっと違うところにゴールを作らなきゃいけないと僕は思うんです。
自分の糧になることだし、通過すべき点ではあると思うんですが、それを手にした若い役者たちが迷子にならないように導いてあげることを、2.5次元作品に携わってる人間として、僕はしなきゃいけないんだろうなと。
やり方はいろいろあるんでしょうが、ここ数年以内で着手しなければと考えています。
――荒木さんの今後の動向に注目したいと思います。17年目の抱負を聞かせてください。
6月には37歳になるんですが、この年齢になると間違いなく体力は低下しますし、容姿の衰え、老いというものが表面に出てくることによって、2.5次元作品にビジュアルを寄せられなくなってしまうと思うんです。
そこを受け入れたうえで、できることとできないことを冷静に判断し、自分がやるべきことを見つけて40歳になるまでのプランをきちんと組み立てていきたいです。
この春も作品が続きますし、アニバーサリーのファイナルとなる大きなイベントも控えている。引き続き、見守っていただければと思います。
荒木宏文インタビューは<プライベート編>に続きます。こちらもお楽しみに!
撮影:河井彩美 ヘアメイク:小林純子