鈴木亮平「エゴイスト」で魅せた入念な役作りに裏打ちされた表現力
<鈴木亮平 インタビュー>

――浩輔役は、松永大司監督からのご指名だったそうですね。監督に勧められて原作を読んでいかがでしたか?
「エゴイスト」という強いタイトルの作品なので、どんな悪い奴の話なんだろう?と思って読み始めたら、とても優しい愛の物語で。龍太やその母を愛しながらも、「与えることで満たされる、この愛はエゴなんじゃないか?」って、ずっと疑問を抱き続けている男性のように僕は思いました。
そんなふうに、常に自分を客観的に分析しながら生きる原作者の在り方がとても印象的で、高山真さんはいったいどんな人なんだろう?という興味が一番強かったですね。
――浩輔役を引き受けた一番の決め手は?
ふたつありまして。まずは原作のテーマが素晴らしかったことです。愛かエゴか、というのは、僕も興味を持っていたところだったので、そこに共感したのがひとつ。 もうひとつは、浩輔がゲイであることの描き方に対して、性的マイノリティに関するセリフや所作を監修してくださる方を脚本の段階から入れてくれたり、浩輔の友人役にも全員、当事者であるゲイの方々をキャスティングするなど、偏見や差別を助長するような描き方を極力しない態勢を整えてやるつもりだと聞いて、それならばやれるかもしれないと思いました。
――役作りは何から取り掛かったのでしょう。
残念ながら、高山さんは僕が会う前にお亡くなりになってしまったので、実際の彼はどういう人で、本当はどういう出来事が彼に起こったのかを、彼を知る方々に伺いました。
そして、この映画はゲイカップルの話でもあるので、セクシュアリティという面では、ゲイの方々にもたくさんヒアリングをさせていただきました。この役に限らず、いつも実際の方にお話を伺うことは多いのですが、今回は実在の人物がモデルになっているので、特に入念にリサーチさせていただいた感じです。 恋愛に関しても、恐らく、同性愛だからこそ起こる状況や感情を、異性愛とまったく同じものとするのも違うだろうし、かといって、必要以上に特別に描くのも違う。
自分の想像だけで作ってはいけないし、ゲイの方たちがこの映画を見たときに、違和感があるものにだけはしたくないなと思って、みんなでよく話し合いながら作っていきました。

――浩輔の柔らかな物腰や、ハッとするような色気はどのように会得していかれたのですか?
実際の高山さんのキャラクターや話し方、振る舞いというのは、お話で聞いたものをそのまま形にするのではなく、それをどれぐらいの見え方で表現すれば過不足なく届くかというのを、監修の方と話し合いながら作っていきました。
“高山さんをもとにしたキャラクターとしてリアルかどうか”というのと、“必要以上にステレオタイプを助長してしまわないか”という二つの間のラインを見極めながら、監修の方と話し合ってキャラクターを調整していきました。
――リサーチを重ねる中で、たとえばご自身も同性愛者に対して偏見を持っていたな、などの気づきはありましたか?
それはたくさんありました。いまだに自分の中でも、拭いきれない偏見があるのを感じますし、子どもの頃から漠然と培われてきたものを払拭するのは時間がかかるなとも思います。
同時に、これまでの自分の言動に対して、思慮が足らなかったなと思うことが多々あって、反省することも多かったです。たとえば、知人や友人に対して、相手が同性愛者である可能性を考えもせずに、「彼女いないの?」とか「結婚しないの?」って何気なく聞いていたなとか。
今回、自分がゲイの役をやって、阿川さん演じる妙子さんに、「浩輔さん、彼女いるの?」って、台本にないセリフを言われたときに初めて、「ああ…自分が同性愛者だったら、こうして毎回、大切な人にさえ嘘をつかなきゃいけないんだ。これは生きづらいぞ」というのを体感したんですよね。
浩輔が実家に帰って父親と接するシーンでも、父親は息子がゲイであることを知らないので、振る舞いも、声の出し方もすべて、少し作った自分を演じなきゃいけない。僕自身は、実家に帰れば、東京での鎧を脱ぎ捨てて、よりナチュラルな自分で安心して過ごせるんですけど、浩輔にとっては逆なんだな…というのもショッキングでした。
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