鈴木亮平「エゴイスト」で魅せた入念な役作りに裏打ちされた表現力
スーツは気が引き締まる“戦闘服”

――龍太役の宮沢さんとは初共演とのことですが、会う前の印象と、実際に共演しての感触を教えてください。
会う前は、透明感がものすごくて、透き通っているようなイメージだったんですけれど(笑)。実際に会うと、やはりとてもピュアで、話し方もジェントルで、内面的にもまっすぐな、本当に龍太みたいな人だなと思いました。
――浩輔と龍太のラブシーンにおいて、気を配っていたことはありますか?
今回の映画に限らずですが、恋愛の場面では、相手を本当に愛するということしかない気がします。それがお客さんにも伝わると思いますし。
そういう意味でも、氷魚くんとは俳優としての相性がすごくいいなと感じていたので、インティマシー(親密な)シーンにおいても、緊張しすぎることもなくリラックスできて。とてもナチュラルにお互いを求めあえるシーンになったなと思います。
――龍太の母・妙子を演じた阿川さんとの共演はいかがでしたか?
僕がいうのも生意気ですが、もう素晴らしかったです。俳優としてのキャリアはそう多くないはずなのに、常に自然体で演じられるというのは本当にすごいことで。人間力や表現者としてのセンスがずば抜けているだろうなと感動していました。
――現場では何かお話をしましたか?
今回の現場は、監督の撮り方が半分エチュード(台本なしの即興劇)みたいな感じで、セリフも決まっておらず、その場で相手が言ったことに対して、自分も役の気持ちになって返すというのがよくあったんです。
それで僕らも、現場に入るときから役に近づいていないと、カメラが回ったときに、役としての自然な言葉がスッと出てこなかったりするので、ほかの現場みたいに、撮影合間に自分に戻っておしゃべりすることがあまりなかったんです。
だから阿川さんも、現場では常に半分くらい妙子さんだったし、僕もずっと半分浩輔でした。それは俳優としては非常に恵まれた環境で、スタッフ全員が、俳優の演技をどれだけ自然に引き出すかということに対してケアしてくれたからこそ、あの空気感が撮れたんだろうなと思います。

――特に印象に残っているシーンを教えてください。
飲み仲間と居酒屋や二丁目のバーでしゃべっているシーンの撮影は楽しかったですね。話さなきゃいけない話題はあるけれど、基本、「好きに飲んで楽しんでください」という感じだったので(笑)。
それと、僕が好きなのは、自宅で龍太とお酒を飲みながら、浩輔が子どもの頃に行った家族旅行での母親との思い出について話すシーン。浩輔が自分の心の傷になっている部分を笑いながら何気なく話すんですけど、その様子を、龍太がうれしそうにビデオで撮っているんです。
実際の高山さんは、写真を撮られるのを絶対に拒否する人だったらしくて、写真もあまり残ってないんですけど、龍太にだけは心を許して、こういうものを撮らせていたなら僕はすごくうれしいし、そうであってほしい。そんな関係であったら素敵だなっていう僕の願望も入っているし、龍太と浩輔の幸せな場面としてすごく印象に残っているシーンです。
――浩輔は、ブランドものの服で身を固めるのを“社会に出るときの鎧”にたとえていますが、鈴木さんは、公私を切り替えるためにしていることはありますか?
僕も浩輔に近いところがあって、自分の着ているものでスイッチが切り替わる感覚がすごくあるので、その役になるぞ、と切り替わるのは衣装を着たときです。あと、仕事でもなんでも、スーツを着るとパシッと気が引き締まります。必然的に背筋が伸びるつくりになっているし、戦闘服みたいな感じがありますよね。

――スーツといえば、『エルピス—希望、あるいは災い—』(フジテレビ系)で演じた斎藤正一役のスーツ姿も色気があって素敵でした。今回の浩輔がまとう色気といい、鈴木さんが意識している色気の出し方の秘訣があれば教えてください。
それは“鈴木”に色気があるんじゃなくて(笑)。脚本家の方が書く色気のあるセリフや照明のあて方、監督の演出や衣装によって、スタッフ全員が“鈴木の色気”を演出してくれてるんです。
たとえば『エルピス』で着たスーツは、「斎藤はスーツを完璧に着こなしてないとダメ!」というプロデューサーのこだわりで、全部僕の体形にぴったりのオーダーメイドなんです。僕はそこに、最後にパラパラっとチーズを振りかけてるだけで。
ただ、斎藤役をやってから、写真撮影でのカメラマンさんからのリクエストが一気に変わりました。今までは「爽やかに」とか言われてたのが、「もっと色気を出してセクシーに」「色気ダダ洩れな感じで」って言われるようになりました(笑)。
――ご自身の中で“色気スイッチ”があるのでしょうか?
ないです、ないです(笑)。たとえば斎藤さんに色気があったとしても、それは斎藤さんと僕が向き合い続けて作り上げたキャラクターだから宿ったもので、スチールカメラを向けられて、「じゃあ、色気お願いします」って言われても、僕は出し方を知らないんです(笑)。
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