<試写室>深いとこまでえぐってきて、自分の価値観さえ揺さぶってくる…そんなドラマ!
4月4日(土)23時40分~『B面女子』
『B面女子』ってタイトルだったので、はいはい、主戦場じゃないとこ(=つまりBサイド)でこじらせてる女子たちのガールズトークドラマね、脚本がアラフィフ女性たちの井戸端会議的な会話劇『ノンママ白書』(鈴木保奈美主演、2016年に同枠で放送)の伴一彦先生だしね…と勝手に想像して、「森川葵が“変態”女子に!?」っていうドラマ紹介を見て、あ、そっちね、先週までの『パパがも一度恋をした』の流れを汲んだ「オトナの土ドラ」枠おなじみのクレイジーシリーズね…と簡単すぎる心構えをしたところで、さっそくドラマを視聴…。そしたら冒頭、実在するお店の軒先からスタートして、おいしそうに焼き鳥食べるもんだから、え?まさかの?グルメドラマだったんかーい!なんつって、ツッコんだのも束の間。全然違います!
このドラマは、
ものごとを違った角度から見てごらん?
世界は変えられないけれど、自分の世界は変えられるよ!
だから、B面女子!!
まさか、そんなドラマだと思わなかった。
だけど、なんだか哲学的なこと言っちゃって、小難しいっていうか、めんどくさいドラマ?じゃないんですよ。とっても味わい深くて、上質な短編小説を読んだような充実感が味わえる、そんなドラマで、なによりすっごくエンターテインメントなんです。
この作品は森川葵さん演じる主人公の“変態”女子が、さまざまな“食事の場”で出会った人々との交流を軸に、5つのお話から成るオムニバスドラマで、3分~10分ちょっとの短編が積み重なっています。
正味45分くらいの時間の中に5つもドラマがあるって、ちょっと、散漫じゃない?とか、起承転結とか、ちゃんとドラマチックは用意されてんの?って心配になるかもしれませんが全くそんなことないんです。

一番最初に描かれる「妖精さん」という、奥田瑛二さんが登場するエピソード。これがまたよくわかんないタイトルで、実際、お話の冒頭はかなりトリッキーで、珍妙な展開なんですよ。だけど、次のエピソード、松本まりかさんが登場する「35歳の女」で、かなりイタい女性のエピソードにクスっと笑ってハッピーエンド?になりかけたラスト。ちょっと不穏な空気が立ち込めて、CM明けの第3のエピソードで、世界がひっくり返ります。“妖精”の秘密だったり、自称“変態”を名乗る主人公の変態たる所以と珍妙に振舞っていたその謎が、そこから解き明かされるという、びっくりする構成になっているんです。

1話と2話で、森川葵さんが演じる主人公の変態っぷりがすごくしっくりしてて、若いキャラクターなはずなのに、男女年齢問わず出会った人たちのそれぞれの人生を説いていっても全然違和感がない、ストーリーテラーとしてぴったり…と思っていて、このまま最後まで続くんだなって油断してたもんだから、そのひっくり返りにはかなり驚きました。
夜中にのほほんと、気楽に、美味しそうなグルメ映像をつまみに、お酒でも嗜みながら見る、そんなドラマかと思ってたら、それだけじゃない。すっごい深いとこまでえぐってきて、自分の価値観さえも少し揺さぶってくる…そんなドラマに仕上がっていると思います。
3分~10分のお話の中に詰め込まれたさまざまなドラマチックと、中盤でひっくり返る構成、そしてその中で説かれる生き方のヒントが、たった1時間弱の放送の中で味わえるんだから、お得じゃないですか?だから是非、4月4日の土曜の夜、23時40分、このドラマにチャンネルを合わせてみてください。そして、僕が試写で事前に見といてなんですが、土曜の夜、ゆったり、まったり、何にも考えないでこのドラマを見ることに意味があると思います。見終わったら、きっと充実した気持ちで、気分良く眠りにつけるはずなので…。

僕はこのドラマを見て、どんな人も特別じゃなくて、特別だなって思ってる人も、当たり前のように悩んで、だけどそれを経て、切り替えて、自分の人生を切り開いていくから、特別のように見えるだけなんだ…って、なんだかかなり沁みてしまいましたよ。だって、いま、まさにこのとき。嫌な出来事ばかりが起きて、世間が殺伐としてて、まわりのことばかり気になって、ついつい自分を顧みることを忘れてしまってる…だから、すっごく沁みちゃったんですよね。
そんな僕みたいに、最近ちょっとくさくさしちゃってる方は特に、そして、そんなこと関係なく、美味しそうに映し出されるグルメたちと、ちょっと良いお話を堪能したいって人も是非、ご覧ください。
何かが変わった!ようで、だけどやっぱりすごく何気ない感じで終わっていくラストの余韻も素敵なので、視聴後感がとても爽やかで、良い時間が過ごせること間違いなしです!
text by 大石 庸平 (テレビ視聴しつ 室長)