<試写室>解決していないようで、どこかスッキリ…この浮遊感こそ『隕石家族』の魅力
4月18日(土)23時40分~オトナの土ドラ『隕石家族』第2話
前回「今まで観たことないドラマ」って自分で言っておきながらなんですが、今回のお話、っていうか演出、妙だな、どこかで見たことがある気がする…なんだろう?すっごく懐かしい気持ち…理由はわからないけど心がザワザワする…一体この感覚は何なの…?ってなってた時、正子おばあちゃん(松原智恵子)の部屋の“マッサージチェア”で戦慄が走りました。
『火の粉』じゃん!
伝説のマッサージチェアじゃん!!
怖ぇーーーー!!!
すいません。あまりの怖さに取り乱してしまいました。
え?なんですって?ご存知ない?あの伝説のマッサージチェアをご存知ないですって?
「オトナの土ドラ」第一作、『火の粉』(2016年)で、殺人鬼の主人公(ユースケ・サンタマリア)が、隣人家族を一人一人懐柔していく際に用いた、あの、伝説の、マッサージチェアですよ?一人ずつ呼び出して、意味なく、マッサージチェアに座らせて、揉み玉の音“ムギュゥ~”とともに、殺人鬼が「反省文を書けー!!」って叫ぶんですよ?あー怖い。
僕の中で伝説と化した、あの恐怖が、正子おばあちゃんのマッサージチェアが映し出された瞬間、一気に蘇りました。そういえば『火の粉』と同じ監督だし、制作会社も同じじゃないですか!不穏な音楽の入れ方とかインサートとか、まさに『火の粉』!今回のお話にマッサージチェアは全然関係ないし、息子でパパ(天野ひろゆき)の会社が健康器具メーカー勤務とはいえ、あそこにマッサージチェア置いてあるのは、そういうことですよね?クレイジー劇場の幕開けってことですよね?

『隕石家族』とか言って、アットホーム感出してるから、いくら同じ枠とは言え、あっちの『火の粉』=クレイジーシリーズの系譜だとは微塵も思わなかったー。同じインサート演出でも、こっちは隕石の衝突映像だもんなー、全然気付かなかったー。やっている技法は同じでも、中身が違うとこんなにも印象は変わるのかー。脚本と主演の組み合わせから『花嫁のれん』の系譜だとばかり思い込んでたよー。なんていうミスリーディング!

…って、このレビュー書いてる人は、一人で一体何を興奮しているんだろう?とお思いの『火の粉』未視聴者のみなさん。是非FODにてご覧ください。絶対面白いし、この興奮の意味がわかります。そして『火の粉』うろ覚えの方、伝説のマッサージチェアが登場するのは第7話です!別に予習しなくても結構ですし、今回のお話に全く関連性はないんですが、先に見て思い出しておくと、これまで味わったことのない、別次元から醸す恐怖が体感できると思います。
さて、前置きがかなり長くなってしまいましたが、なぜ僕が『火の粉』を思い出してしまったのか?それは、同様の演出が施されていたのはもちろんですが、今回の第2話が、あまりにも油断出来ない、安心できるすき間がない、クレイジーな回だったからです。
今回は前回同様、ノンキだし、ふざけてるし、時折アットホームで和むシーンもあるというのに、その合間合間に狂気が描かれるのです。

隕石が衝突して地球が滅亡するかもしれないのに、ゴミの分別とか、嫁姑問題とか、些細なやりとりはやっぱりなくならないんだな…人間ってそういうもんだよな…なんてわかった気になってしみじみしてたら、突如“畑に人間生き埋め事件”が勃発します。
その画面の衝撃度はもちろんですが、そこから、光浦靖子さんが演じるご近所主婦のゴミ分別に対する異常な執着と、正子おばあちゃんの悪夢のトラウマが描かれるという予想だにしない展開。しかもこの正子おばあちゃんのパートは、ホームドラマでよくある、家族それぞれの秘密が徐々に暴かれる…というフォーマットに則っていると思うんですが、その秘密は僕が知るホームドラマの中でも最もヘビーで、劇中でもオマージュしてますが横溝正史的な恐怖と衝撃度です。

そして、あまりの衝撃で思わず笑っちゃったのがその結末。正子おばあちゃんのエピソードのオチのセリフが「あらーお似合い、ナマステ」なんですよ。どういうこと?って思いません?どうすればこの衝撃のセリフに辿り着くのか?乞うご期待です。
また終盤、一件落着したシーンで、このドラマを言い得て妙なセリフを娘の結月ちゃん(北香那)が放ちます。
「ねぇ、ママ…。結局、何だったの?」
「こっちのセリフだわ!」ってついつい僕は画面に向かってツッコんじゃったんですが、ふと考えると、この腑に落ちないようで、落ちてる…物語が解決していないようで、どこかでスッキリしている…この浮遊感こそが『隕石家族』の魅力なんですよね。
そして、そんな僕を見透かしているかのように、ラスト、天野くん演じるパパが、どこまでわかってるの?わかっていないの?…と気になり過ぎるエンディングで次週…。待ちきれない!
text by 大石 庸平 (テレビ視聴しつ 室長)